兵器道楽

兵器に関する古い時代の本を読んでいます。

航空朝日2605年7月1日号[B29のレイダー][P47見聞の記][最近の海外航空事情]を読む

太平洋戦争(大東亜戦争)が終わる直前もしくは終結直後に出回った軍事雑誌が届いたので読んでみることにする。表紙イラストはリュウグウノツカイではなくホウボウである(指摘があるまで鴨だと思っていた)。創刊から約5年、発行は内地+満洲+台湾をカバーしているものの、全31ページというもはや同人誌のような薄さになってしまった軍事雑誌である。今回はなかでもインパクトのある写真を真っ先に持ってきました。

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1面特集はB29のレイダー。電波兵器の出現により、航空機は時間や気象を問わずしてミッションを遂行することが可能となり「威力」はより一層増大してことを説いている。電波兵器と一口に言えども「警戒機」「標定機」「暗視機」「探索機」「友軍識別機」「電波妨害機」「誘導機」「航法用機材」など様々なものが実戦投入されているというのだ。「Radio Detection and Aircraft Ranging」(電探/レイダー)を搭載したB29が雲上や夜間を問わず爆撃をおこなう仕組みを解説している。地形や都市部、船舶が手に取るように硝子の円盤に表示される装置をわかりやすく説明している。

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2面記事の「P47見聞の記」では45年2月に漢口で不時着した[P-47D サンダーボルト]の詳細な解説を載せている。「アメリカ陸軍戦闘機の三羽鳥ともいうべきP38、P47、P51の中の一つのP47が、こんな平凡な戦闘機であったというのが第一印象であったからである。」とのコメントと機動性を犠牲にしつつも防弾性や生産性を重視しているとの論調。主翼、エンジン、プロペラについて3ページに渡りレビューしている。ちなみにP-47は「パンツァーフロント」で執拗に爆撃してくるアイツです。

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そのほか、外紙の翻訳記事には「大馬力発動機」「航空写真」「B29に協力する科学部隊」「部品の統一」「プロペラ修理の実情」「ロッキードの気圧/液圧装置」など思いのほか充実している。巻末連載コンテンツの最近の海外ニュースでは「世界一周旅客機」「過剰航空機を教材に」「ホーカー・タイフーン」などを報じている。写真では「新鋭艦上爆撃機「P47」「PBYコロネードー」「PBY5Aカタリナ」の写真が掲載されている。

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さて、今回の本は195年7月1日号なのだが本文中において広告に不自然なもやがかかっている。おそらく、印刷の過程において差し止めが行われていたのかもしれない。「コンサートン受信機」の宣伝がなんだか可哀想になっている一方で「ヘモロス」と「ミナト式」は削られていないのが諸行無常を感じる。そして電球に関しては「ご家庭用は少なくなる」とは言ってないのだ。

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当たらめて考え直してみると、この本の回覧欄に名前が書いてあることをみたことがないあたり、読者層がどういった人物なのか伺えるような気がしなくもない。

 

ガルパン x ココス のコラボについておもうこと(戦車の種類、すっきり又は視覚的どっきりネタあり)

あの大ヒット戦車まんが「ガールズアンドパンツァー」とココスがコラボするらしい。ブログ読者の諸兄におかれては、これを機に戦車について再学習しておくのも有意義であると思い、ここに第二次大戦にて活躍したチャーチル、クルセーダー甲/乙、ゼネラル・シャーマンおよび自走砲群の資料を提示する。(公式より引用,なお小生の住んでいる地区にココスがないという事情も汲んでいただければ幸いである)

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こちらが問題の書である「科学朝日2604年6月号」だ。特集はポムポム砲の構造、ロケット新兵器、グラビア"陸軍鉄道部隊"、戦車と自走砲である。(全50ページ)

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(本文要約)「戦車の設計上、重量および容積はまづ輸送船に積載される場合は起重機、船、鉄道、道路の関係より制約を受ける」という今日でも割と重要なことが書いてある。具体的には英軍は機動力を重視した巡航戦車[クルセーダー甲/乙]と歩兵支援のため装甲・武装強化を図った歩兵戦車[チャーチル]の概要を書いている。一方で合衆国では工業力にものを言わせ装甲、火砲、機動力の三要素を追求した[ジェネラル・シャーマン]型が主力として使われているとのことである。このほか、重量60トン、装甲240ミリを持つ[M1重戦車]を宣伝しているが重量の多い戦車は不都合が多く、"何所で使用する積もりかといいたい"と言われている。一方で「大陸続きの戦線なら船に積む必要はない。道路/橋脚の強化と接地長を大にすることで重量の増加が許される傾向にある」との指摘をしている。これにより日本の戦車がなぜコンパクトなものが多いかお分かり頂けるのではないだろうか。独虎戦車が潜水渡河を可能とし、米軍が渡河機材を用いていることも言及しており、またこれらの傾向から今後は50~60トンクラスの戦車が主流になるとの予測まで書いている。

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戦車に随伴する自走砲群。生産と補給を簡易化するために共通の部品を用いていることを指摘している。なお、自走砲と砲戦車の区別は議論されているが、砲塔を自由に回転させることができるものが砲戦車、そうでないものが自走砲と定義されている。しかし、実際には判然していないとか。(これが今日のミソとなるネタだとおもいます)

装甲師団の支援砲兵用としてM10砲戦車、M7自走砲、M12自走砲の三種類があげられていた。それにしてもこの4ページで機動力を有する加農砲の優位性、および戦争遂行のための工業基盤の必要性を説いており、皇軍の事情を考えるといささか不安になってしまう。

以下、その他のページの解説をおこなう。表紙↓

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英国の対空砲「ポムポム砲」解説。

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グラビア欄。日本軍鉄道部隊。

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科学者x当局の一問一答コーナー「工夫の余地はないか」。今回は防空待避所の検討。下の写真が竪穴式住居にしか見えないが、どうやら底が深くなっているらしい。

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英米軍の貨物船改造空母について。

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海外ニュース欄。イタリア戦線にて人間魚雷投入(搭乗員が魚雷からどのようにして離脱するかは不明)、遠距離操縦式豆戦車の登場、スツーカに37mm砲搭載とのこと。

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巻末広告欄。富士ネオパンと東芝東洋紡スポンヂ。(以下ドッキリネタかもしれません)

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裏表紙も東芝マツダランプ。航空機、灯火管制のイラストと

光を漏らすな!

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正直、この色使いはビックリする。(届いたときの茶封筒を開けてこれだったので猶更おどろいた)

「二割節して明るい」がこれになり、その後「真夏の夜の太陽」「あかるいおうちはマツダランプ」(第23回 毎日広告デザイン賞)になるのだから世の中何が起こるか分からないのも頷ける。

さて、読者諸氏におかれては戦車の能力もまた国家の工業力が大きく反映される点を深く噛みしめながらココスの食事を食べていただきたい次第である。

科学朝日2604年12月15日号[覆面を脱いだ皇軍新鋭機][敵戦車変わり種][上陸作戦に大"人工港湾"][ロケット對ロケット]を読む

遅ればせながら新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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航空朝日が航空機に関するニュースを中心に扱う傍ら、姉妹紙の科学朝日が国防または全般の科学事象を扱っており、特に戦闘車両の諸設計や技術・兵器全般の話題ならこっちを見たほうがいいと思い[敵戦車変わり種]につられてとりあえず手に入れてみた。科学朝日は月刊誌であったが[報道と解説]シリーズになってからは戦時決戦下の時局を鑑みて30ページという薄さであるもののどうやら月に二回刊行されているようである。

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表紙はイギリス軍特殊部隊とドイツ軍戦車、そして航空母艦である。巻頭グラビアは雷電」「彗星」「銀河」「呑龍」が日本各地に襲来するであろうB29撃滅のために投入されることを報じている。これまで日本軍機は名前すらまともに出てこなかった訳であるが(特に海軍機)、本項は「飛行機増産の一途に挺身戦闘される銃後諸氏への激励の言葉にかえたい」とのことである。

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続いて「敵戦車変わり種」。ノーマンディ戦線(原文ママ)で運用されているイギリス軍地雷除去戦車についての記事であった。「かに」「さそり」と呼ばれる装備を後部に搭載している。タイトル的にISシリーズ(ソ連)やT29(米国)あたりを紹介してほしかったが致し方あるまい。翻訳者のセンスが思いっきり出ている気がする。

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海外時報欄ではトップ画像にロンドンへ着弾するV1ミサイルと「土木」にノルマンディ戦線において運用された"人工港湾"が真っ先に書かれている。「反数軸軍が北沸港湾を占領するのに先立ち、港湾施設のない海岸に兵員揚陸の施設を出来る限り急速に施すための諸材料」が紹介されており、わずか2,3週間にてドーヴァー港と同じくらいの大きさを持った港が北沸二か所に完成されたと報じている。なおソースは朝日新聞社ソ連軍機関紙「赤色艦隊」より転載したものとか。

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そのほか「カポック代用品の登場(救命胴衣の材料になる木材)」「成層圏を征くV2号」「Uボート生産中止」「殊勲の戦車拳骨」「B29を大規模輸送機に-複葉にして航続距離6000キロ-」などが紹介されている。一方で国内ニュースでは「食糧保存に電気」「防空都市の実現へ」「ヂーゼル機関の欠点改良へ」(内燃機関の固体燃料使用)といった話題が並んでおり戦局の悪化と本土すらも危うい気すら漂わせている。(本土決戦をするためには食料を備蓄し、セメントと土砂を運搬して強固な防空地下施設を建設し、大型送風ファンを回さねばなるまいという深読み)

大型コラムには「ジュラルミン金属の研究」と「生産過剰に悩むアルミニウム工業(米国)」、「落下傘に関する新考案」「超大型鉱石運搬車」が載っている。超大型運搬車は最大28トンまで貨物を搭載でき、20トンを搭載して箱根の山を登り切る性能を有しているとのことである。

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巻末コラムの「ロケット對ロケット」と称して、V1巡航ミサイルを撃墜するためにイギリス軍が配備している対空ロケット弾の画像が載っている。一口に噴流により推進する無人飛行弾といえども"無電操縦式ロケット爆弾""流星爆弾"では全く原理がことなり、迎撃する側も様々な対策に追われていることを説いている。その他、紙面下部には「人間魚雷の搭乗員」「米の航空機風洞」「地蜂の箱」(ハーフトラックに乗せられる四連装高射機関銃)が紹介されている。

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本号も暗に日本政府の無策を批判しつつ、英米にすり寄るような内容を載せた一冊であった。とはいえ戦車の本を買ったら皇軍戦闘機と流星爆弾、そしてノルマンジー上陸作戦の話題が手に入り満足することができた。戦時下において「プライベート・ライアン」や「Call of Duty」、そして「Medal of Honor」が壮絶な銃撃戦を描いているといわれている一方で、きちんとそのあとの事象を報道している点は特筆に値すると思う。

 

裏表紙宣伝は三和銀行東芝。「吉田○○」という鉛筆による書き込みがされている。(吉田戦車ではないはずだ) 注視してみると、コラージュ模様がプリントされており「航空朝日」に比べて芸が細かい気がした。1944年の〆としてはイマイチなボリュームである気もするが、何だかんだで重要な出来事科学目線で復習できるできるあたり貴重な一冊である。改めて非常体制下こういった"薄い本"を後世に残した先人の労苦には頭が下がる。

 

航空朝日 2604年11月1日号「ロケットの話」(秋水ネタもあるよ)を読む

ロケットといえば、現代の日本語では宇宙旅行をするための乗り物(アポロ宇宙船やソユーズ、またH2Aといった無人機も含む)や無誘導の砲兵器という風潮である。しかしながら、1940年代の意味では噴流推進で動く乗り物全般を指していたらしい。以下、ここに1944年11月にでた軍事雑誌のロケット機特集を読んでみることにする。

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表紙裏グラビア。日本+枢軸+反枢軸軍機の画像が多数。

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今回の肝となるロケット機の話。外誌の翻訳ではなく、日本人によって書かれている。

さて、本文には本来のロケットを月世界旅行や宇宙探検の乗り物として話に現れてくる、液体酸素と液体水素を燃やして噴出させ飛ぼうとするものであり、燃焼に必要なもの一切合切を持って歩く」ときちんと定義している。しかし、「空気を取り入れ、これにガソリンなどの燃料を入れて燃焼させ、後方に噴出してその反動で推進せんとすもの」ときちんとジェット機についても違いを解説している。

本章はこうした科学燃料ロケットと、熱空気推進・タービンロケットの双方について図と文章で解説しており非常にためになる(と思う)

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「甲乙二つの燃料液をもっていき、これを混合すれば化学反応を起こして発熱し適度な温度になるようにすればよい。」って秋水のことを指しているような気がしなくもない。

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タービン・ロケット機のイラスト。本項では基礎理論や構造に加えて「熱空気推進装置は装置全体の抵抗が機体の抵抗の大半を占め、しかも機体抵抗の大なるが故の速度低下は直ちに装置の性能低下となり、ちょっとの原因で加速度的に飛行機の性能が落ちる」とイタリア カンピーニ戦闘機のことをボロクソに書いている。

ちなみに燃焼温度を上げることでエンジン効率を改善できるので高温にも耐えられるタービンが必要なことも言及していたりするのが面白い。 

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そして、〆となるロケット機のパワーポイント的分類図。タービンロケット機の時代は確かにきたが、未舗装の滑走路/誘導路では埃をすってえらいことになるなんてことは書かれていない(ミグ29はごみを吸わないように工夫がしている) 笑

 

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その他の記事、アメリカ初のジェット機の話

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そして英米空母の話。この本が書かれていたのはちょうどレイテ・フィリピンの戦いのころである。エセックス型11隻、ロングアイランド型50隻、インデイペンデンス型9隻以上がロールアウトしたことが記されている。だが、護衛空母に関しては詳細な性能はもとい艦名すらも分からないと書いてある。

なお、巻末の海外飛行機ニュースではB29の生産進捗やB24の解説が載っている一方でハインケルHe111Zが運用されていることが載っている。なお海外では「アーヘン」陥落、「ベオグラード」が占領され、日本では新聞朝刊が2ページとなっていたころらしい。

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それにしても、今回は「カンピーニ」「カムピーニ」で表記ゆれが起きていたりしていたが、硬派で技術志向な記事が並んだ一冊であった。さて、ブログ読者の方々におかれてはボウイング・ジャンボジェットやMD会社・F-15J "イーグル"を「噴流推進機」「ロケット要撃機」などと呼んでお友達からドン引きされても主筆はその責を負いかねるものとする。

科学朝日 2604年8月1日号「戰車の電氣裝備」(電気戦車の登場)を読む

ガールズアンドパンツァーやWorld of Tanks、そして日本戦車が実装されたWarThunderに便乗し、太平洋戦争中の資料より戦車の諸設計について書かれた"科学朝日2604年8月号「戰車の電氣裝備」"を紹介する。なお詳しくは割愛するが「ガールズアンドパンツァー」とは、大洗町を舞台に女子高生が第二次大戦の戦車に乗って戦うをするスポ魂アニメであり、TVシリーズ、OVA、そして劇場版が公開されている。

www.youtube.com

この本の当該記事は日本陸軍の中尉によって書かれたものであり、英米ソ独の誇る戦車の設計と今後の技術の在り方について触れている。記事にはき米"シャーマン将軍"、英"チャーチル"、ソ連"T三四"、ドイツ"虎" "フエルヂナント"など今日でもよく知られている戦車のイラストと内部図が載っている。戦車がより強大化していく一方で、搭載する電装品も重要な使命を帯びており、エンジンスターターから砲塔モーター、計器類、車内電話、通信機をはじめとして冷暖房やジャイロコンパス、スタビライザー(安定装置)等がすでに必須品であることを力説している。

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また、将来的には「ノクトヴィジョン」「ヴラウン管」「レーダー」を搭載することで昼夜を問わず高い戦闘力を発揮しうる車両が登場すると同時に、搭乗員は装置に対する知識取得も必要 という未来予測まで書いてあった。(そしてそれは現実となる)ちなみに彼いわくそういった将来の戦車は「電気戦車」とすら呼べるものであるらしい。

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なお、例にもよって「日本の戦車が他国より遅れている」や「日本が技術で負けてしまう」とはどこにも書いていないのは当局の意向を反映しているといえよう。別のページには、九州に墜落したB29の話が載っていたりするし、この本が世に出たころにはグアムで日本守備隊が玉砕したころでもある。

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こういった真面目な歴史的書籍を、好きな映画やゲームの布教ないし攻略ツールとして使える時局に感謝しなくてはならない・・・かもしれない。

航空朝日2605年6月号(大型機について/ロッキード・コンステレーション/その他海外航空事情)を読む

(お断り:今回の更新は時局柄、短縮版となります)

戦時中の暮らしを後世に伝える「兵器生活」というサイトがある。その中に、終戦直後に作られたある写本のハナシが載っており、あまりにも気になってしまったので元の本(航空朝日S20年6月号)を取り寄せた。

http://www.warbirds.jp/heiki/180000.htm

特集「高高度機の装備」については、B29の性能は優秀な電気装備に担保されている点を旧型機と比較した解説であったのだ。大型航空機は製造国がもつ重工業力が問われ設計において悩まないようにするためには精神力を要するという話である。残りの「ドイツ軍の無条件降伏」「光芒」(戦死した朝日新聞航空部メンバーへの随筆)「新型輸送機コンステレーションの飛行記録」、そして海外ニュース欄より「英米の噴流推進機熱」、「過剰機の民間への引き渡し」が強烈であった。改めて 大戦末期にこれだけの海外事情がどのようにして日本に持ち込まれたか、実に不思議である。(スイスの日本大使館が集めていたのだろうか)

 

ちなみに裏表紙ネタだが、遊園地の宣伝が載っている傍に資源の節約を求めるメッセージがある。そういえばグンゼって下着メーカーだけど飛行機部品も作っていたんですね。

 

さて、写本の作者がドイツ軍の終焉とコンステレーション機に対してどのような感情を抱いていたかは読者の想像に任せる。

 

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追加情報:真偽は不明ですが「あやめ池科学広苑」は8月15日も営業をしていたらしいです.. 

つづく

航空朝日 2605年4月号 "大型爆撃機必勝論" "噴流推進機関" "最近の海外航空事情" を読んで

投票の結果を鑑み、今回は"大型爆撃機必勝論"を中心に取り上げる。

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さて、3月10日の東京大空襲により10万人を超す犠牲者が出たといわれるなかで書かれたのが本コラムである。(と思う) しかしながら、この記事は単に大型爆撃機の優勢をアッピールするだけではなくなんと本土決戦についても書いてあるという衝撃的なコンテンツであった。以下抜粋。

「緒戦の大勝、ガダルカナル以来の生産競争物量戦、サイパン以来は戦局不振 押され気味とはいえ、義忠特攻隊の勇士や鬼神も如く硫黄島の出血作戦と、段階は次第に進んで日本は最後の勝利を確保するまでねばりと頑張りで驕米を打倒しなければならぬ。」

「重大危局を急速に打開し、聖戦目的を完遂するためには、現在の構想水準より甚だしく跳躍する斬新な画期的新構想以外に道はない。世界中皆やっていることをやったのでは勝ち目はない。列国の未だ想像外にあることを断行することに必勝の妙締が存在する。」

要求スペックは「攻撃半径 8500キロ、爆弾搭載量 20トン、速力 敵戦闘機に劣らず(700キロ)、防御力 有力なる銃砲と装甲板」を持つ6発エンジンの航空機らしい。ちなみにB-29の最大爆弾搭載量は9トンである。仰々しい文章が並ぶが、これらの文章は元空母赤城副長であり当時の議員「松永寿雄」によって書かれたものである。しかし、これだけでは終わらない。

「アメリカは大型戦索をとり、日本は最も不利な小型戦索を堅持して来たから現在の苦戦は当然の結果である。いまや日本は米英の大型機をもってする大規模反攻に直面し、決戦体制の再建に迫られている。近眼者流の輩はいまレイテが危ない、硫黄島へ200機もやりたいと眼前の一小局地に夢中となり、一国の大計を誤ることがある。

「日本空襲可能の飛行場を爆破してしまえば危害を除去しうるのであって、空中戦により数千、数万の敵機を叩き落すことは不可能だが、その出発する基地や母艦を爆破することは大型機数百を得れば実行可能である。」

さて、こういった飛行機をどのようにして作るのだろうか。

「B29でさえ5年かかったのだからそんな大型は容易にできないだろうと心配するものあるが、国家を救うための非常手段でやれば設計試作に1年、吾人の要求する450機を作るには2年目で十分である。その間敵機がどんなに来襲しようとも、上陸作戦で来ようと、山腹に横穴を掘って頑張るくらいの覚悟なら絶対に滅びる国ではない。 レイテ島や硫黄島の守備戦力に限度はあるが、日本本土の倍は上陸する敵の何倍でも何十倍でも防御兵力を増強できるから、その間に横穴を掘って大切な技術者や工員や工作機械を疎開し、地下でどんどんこの大型の製作を進めればよいわけである。

だそうである。久しぶりに我が国お得意の感情/精神論を見ることができた。そういえば、山腹に基地を作るといえばエリア88を思い出さざるを得ないが、2年間も山にこもる間の食料や燃料の確保は大丈夫なのだろうかと心配せざるを得ない。本土決戦が実行に移されなくて本当に安堵した。

さて、次のコラムが大型機とジェット機である。

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歴代の各国大型機の歴史と発展を触れており、航空機の歴史そのものを取り扱っているに近いとおもう。

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こちらがジェット機の資料。

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こちらも、(感情論を排して)ジェットエンジンの種類や原理、噴流推進機の歴史に触れており、非常に参考になる。なんと最新鋭のMe262機の戦果まで報道しているぞ。

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さて、お気づきだろうか。この本は最新の大型機と最新のジェット戦闘機理論について触れているのだ。

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こちらはアメリカで使われている地上訓練機材の写真だ。平たくいえば最初期のフライト・シミュレーションである。

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最近の事情を伝える海外ニュース欄。P80 流星なら戦闘機のロールアウトが報じられているが、写真は未公開らしい。お前はF-117か。新型機というのは色々と機密指定が厳しいのかもしれない。

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さて、色々とウィキペディアのように役に立つ歴史と解説が載ったこの本であったが、恐ろしいことに本体は「糸」で縫って修復されている。GHQによる、航空禁止令の中で「聖典」のよるに裏で取引されていた書物なのかもしれない。 たぶん。

なお巻末には飛行機西宮航空園の宣伝が載っている。(時局に鑑みて画像はありませんがググったら出る)が、メッセージの「一機一艦」なる四文字が特攻のことを想起させる気がしなくもない。

 

さて、アメリカでは大型爆撃機B-21が開発開始されるそうである。

明日の戦略爆撃・噴流推進型航空機はどのようなものになるのだろうか。