兵器道楽

兵器に関する古い時代の本を読んでいます。

航空朝日 2605年4月号 "大型爆撃機必勝論" "噴流推進機関" "最近の海外航空事情" を読んで

投票の結果を鑑み、今回は"大型爆撃機必勝論"を中心に取り上げる。

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さて、3月10日の東京大空襲により10万人を超す犠牲者が出たといわれるなかで書かれたのが本コラムである。(と思う) しかしながら、この記事は単に大型爆撃機の優勢をアッピールするだけではなくなんと本土決戦についても書いてあるという衝撃的なコンテンツであった。以下抜粋。

「緒戦の大勝、ガダルカナル以来の生産競争物量戦、サイパン以来は戦局不振 押され気味とはいえ、義忠特攻隊の勇士や鬼神も如く硫黄島の出血作戦と、段階は次第に進んで日本は最後の勝利を確保するまでねばりと頑張りで驕米を打倒しなければならぬ。」

「重大危局を急速に打開し、聖戦目的を完遂するためには、現在の構想水準より甚だしく跳躍する斬新な画期的新構想以外に道はない。世界中皆やっていることをやったのでは勝ち目はない。列国の未だ想像外にあることを断行することに必勝の妙締が存在する。」

要求スペックは「攻撃半径 8500キロ、爆弾搭載量 20トン、速力 敵戦闘機に劣らず(700キロ)、防御力 有力なる銃砲と装甲板」を持つ6発エンジンの航空機らしい。ちなみにB-29の最大爆弾搭載量は9トンである。仰々しい文章が並ぶが、これらの文章は元空母赤城副長であり当時の議員「松永寿雄」によって書かれたものである。しかし、これだけでは終わらない。

「アメリカは大型戦索をとり、日本は最も不利な小型戦索を堅持して来たから現在の苦戦は当然の結果である。いまや日本は米英の大型機をもってする大規模反攻に直面し、決戦体制の再建に迫られている。近眼者流の輩はいまレイテが危ない、硫黄島へ200機もやりたいと眼前の一小局地に夢中となり、一国の大計を誤ることがある。

「日本空襲可能の飛行場を爆破してしまえば危害を除去しうるのであって、空中戦により数千、数万の敵機を叩き落すことは不可能だが、その出発する基地や母艦を爆破することは大型機数百を得れば実行可能である。」

さて、こういった飛行機をどのようにして作るのだろうか。

「B29でさえ5年かかったのだからそんな大型は容易にできないだろうと心配するものあるが、国家を救うための非常手段でやれば設計試作に1年、吾人の要求する450機を作るには2年目で十分である。その間敵機がどんなに来襲しようとも、上陸作戦で来ようと、山腹に横穴を掘って頑張るくらいの覚悟なら絶対に滅びる国ではない。 レイテ島や硫黄島の守備戦力に限度はあるが、日本本土の倍は上陸する敵の何倍でも何十倍でも防御兵力を増強できるから、その間に横穴を掘って大切な技術者や工員や工作機械を疎開し、地下でどんどんこの大型の製作を進めればよいわけである。

だそうである。久しぶりに我が国お得意の感情/精神論を見ることができた。そういえば、山腹に基地を作るといえばエリア88を思い出さざるを得ないが、2年間も山にこもる間の食料や燃料の確保は大丈夫なのだろうかと心配せざるを得ない。本土決戦が実行に移されなくて本当に安堵した。

さて、次のコラムが大型機とジェット機である。

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歴代の各国大型機の歴史と発展を触れており、航空機の歴史そのものを取り扱っているに近いとおもう。

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こちらがジェット機の資料。

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こちらも、(感情論を排して)ジェットエンジンの種類や原理、噴流推進機の歴史に触れており、非常に参考になる。なんと最新鋭のMe262機の戦果まで報道しているぞ。

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さて、お気づきだろうか。この本は最新の大型機と最新のジェット戦闘機理論について触れているのだ。

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こちらはアメリカで使われている地上訓練機材の写真だ。平たくいえば最初期のフライト・シミュレーションである。

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最近の事情を伝える海外ニュース欄。P80 流星なら戦闘機のロールアウトが報じられているが、写真は未公開らしい。お前はF-117か。新型機というのは色々と機密指定が厳しいのかもしれない。

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さて、色々とウィキペディアのように役に立つ歴史と解説が載ったこの本であったが、恐ろしいことに本体は「糸」で縫って修復されている。GHQによる、航空禁止令の中で「聖典」のよるに裏で取引されていた書物なのかもしれない。 たぶん。

なお巻末には飛行機西宮航空園の宣伝が載っている。(時局に鑑みて画像はありませんがググったら出る)が、メッセージの「一機一艦」なる四文字が特攻のことを想起させる気がしなくもない。

 

さて、アメリカでは大型爆撃機B-21が開発開始されるそうである。

明日の戦略爆撃・噴流推進型航空機はどのようなものになるのだろうか。