兵器道楽

兵器に関する古い時代の本を読んでいます。

科学朝日 報道と解説 昭和20年1月1日号 「海外情報」「空母ノルマンディ」「B29の生産に大童」「敵米英の電波兵器」を読む

読者の皆様、新年おめでとうございます🍊。今年も本ブログをよろしくお願いいたします。発見と冒険に満ちた素敵な1年になりますように、心よりお祈り申し上げます。

さて、今回紹介するのは科学朝日 報道と解説の昭和20年1月1日号。1945年の日本人は、年はじめをどのような気持ちで迎えていたのか探るという意味を込めてみます。

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表紙

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ずら~と並ぶ戦車、プロペラの実験施設、砲戦車の図。明らかにあっちの国の絵柄しか載っていないような気もするが、気のせいではあるまい。次いでグラビア欄ではアルミニウムの製造施設と物資投下について解説している。

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海外情報

「大型機40と兵員1万を積載可能な空母ノルマンディ」に関する動向について写真入りで説明している。もとが客船であり防御力は脆弱、高速性をいかし兵員輸送に従事するという編集部の予想が載っている。なお実際は空母にはならず、終戦後に解体されたそうな。

「英軍護送空母の対空火器」護送空母"バットラア"(原文ママ)の対空砲と艦載機"スウオード・フィッシュ雷撃偵察機"(原文ママ)の図。正直言ってカッコイイ図。スターウォーズの1シーンと言っても差し支えないぐらいにはいい写真。

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「B29の生産に大童」最新情報によればボーイングB29「超空の要塞」の生産は米国各地の航空機工場で全能力をあげて生産を開始されているという。PB1"シーレンジャー"、B17"空の要塞"、B26"マローダー"といった機種の生産を打ち切り、生産ラインをB29のものに切り替えているとのことである。注目するべきはボーイングのシアトルとウィチタ、レントン工場のみならず、マーチン、マリエッタなどの会社でも生産しているということである。

「水上を走るブレン砲搭載車」ユニバーサル・キャリアが渡河する際に、浮揚装置を用いて水上を走っているという話。LAV25やAAV7、BMP-2型のような兵器がある21世紀からしてみればだからどうしたの というレベルかも知れないが歩兵の"機械化"に関する重大な一例であると言える。 

 

国内情報

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「新鋭電気機関車EF13 完成」「応急用の茅葺屋根」「地下施設委員会生る」など、決戦下における我が国の動向が報じられている。EF13は、簡易設計・短寿命の方針であったそうだが、なんだかんだで30年ほど使われたらしい。後年の科学朝日(昭和22年3月号)では、EF58型についても触れているあたり電車オタクが編集部にいた可能性も否定できない。

「敵英米の爆弾を暴く」この世界の片隅に案件。航空機から投下される爆弾についての記事。

敵米の爆弾はわが爆弾の威力と比較するときは恐れるに足らぬ。しかし爆弾である以上それは馬鹿にできぬ威力を持っている。したがって十分なる対策を知っていなければならぬ。退避すべきときは速やかに退避して、次の防空活動に備え、決して軽々に行動していたずらに我が国民としての尊い命を損じるようなことがあってはならぬ。という言葉がすべてを物語る。

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「時限爆弾」「破壊爆弾」「爆散爆弾」「科学爆弾」「火炎噴射弾」といった様々な種類の爆弾が使われており、外見は変わらないが能力と対策は別物であるとうことを伝えている。

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そのほか、電波兵器戦車運搬車について図入りで説明している。やはり戦場の機械化は日々成し遂げられているのである。(たぶん)

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海外からもたらされた小情報では「写真偵察もできる爆撃照準器」「戦場にあっても安全第一を願うヤンキー気質が現れた救命艇」「起重機で発動機装着」など。陸海空などいろいろな戦場においても機械化しているのだ。ボーファイタアってなんだよ。

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裏表紙では資源の節約を呼びかける東芝の宣伝。おそらく多くの人たちは兵器生活様で見たとおもうけど。 しっかしまあ、30ページという薄い本なみに薄い本なのであるが、例にもよって内容は異様に濃いものである。今のご時世でこんな本を書ける人がいるとは早々思えないし前人の視野の広さをうかがえる。

 

 あらためまして、本年もよろしくお願いします。