航空朝日 昭和19年3月号 「最近の海外航空事情」「改組された米空軍の全貌」「イギリスの空を飛ぶサンダーボルト」を読む
久しぶりの航空朝日ネタ。"図解科学"や"科学朝日"、そしていくつもの子供向け雑誌と戦中・銃後の暮らしネタは尽きることがない。今回は、久しぶりにメジャーな路線をネタにしていくつもりである。
さて、この本が書かれた1944年の1~3月の出来事といえば「インパール作戦」「大陸打通作戦」「レニングラード解放」「トラック島空襲」辺りではないだろうか(wikipedia:1944年より)。そんな中、マニアックすぎる軍事雑誌は一体何を報じていたのだろうか。今回の記事は一兵卒というよりも司令官になった気持ちで読んでもらいたい。
”アメリカ陸軍航空隊の完全独立への運動は、米空軍の異端児故ウィリアム・ミッチェルが十数年前にこれを提唱して以来、陸空軍内の熱心な一部の支持者によって継承されてきたが、たまたま第二次世界大戦の勃発とともに、すでに独立せる独・英両国空軍の活躍に拍車をかけられ、特に著名の航空評論家アレキサンダー・セヴァスキーを先頭とする民間側の独立空軍論にあおられて俄かに活発になってきた。"
”なお陸軍航空隊司令官アーノルドは、去る12月13日付けの命令をもって通信部隊、補給部隊、信号部隊などの付属部隊を全部航空部隊に正式に編入した。(中略) 今回の命令により直接アーノルドの指揮下におかれ、航空部隊の組織は一段と強化されるに至った。しかして今回の措置は、陸軍参謀総長マーシャルの許可を経てなされたもので、結局独立空軍編成への第一歩とみられている。”
「改組された米空軍の全貌」より
アメリカ陸軍航空部隊の自治的組織への拡充を報じている。すなわち、米空軍の組織がより強固なものになるということだろう。また、米海軍航空部隊の編成についても書いてある。ここを読んでみると、米軍内部でも組織内のしがらみが相当あったように思えてくる。
(抜粋)
・アメリカ空軍は変化に富んだ気象条件・戦闘状況のもと作戦を続けなくてはならない。最悪な気象条件のアリューシャン、酷暑と泥雨のソロモン海域、砂塵を巻き上げる砂漠、豪州・ニューギニア、欧州、印度、中国、中部太平洋、米本土、南米沖海域。
・これまでに経験したことのない困難な諸条件の下にあって作り出された航空機材の設計と、これらの搭乗員の多面性を是認するものでなければならない。
・B-17、B-24の採用は陸軍航空隊の成功であった。
・旧式のP39、P40は高高度作戦には不向きであった。
・この上なく進歩の余地がなくなったP40。
・P39はソ連・アリューシャンで威力を発揮、P40はエジプト戦線でMe109を威圧したのは事実だが、前述の論旨と矛盾している。これは戦術的な局面の際に基づくものであり今後研究されるべきである。
・海岸防御という初期のアメリカの国防方針から、海外地域での航空戦への転換。
「アメリカの軍用機とその一般計画」より
海外の軍用機を紹介するコーナーでは、PE-2(ソ連)、P-47サンダーボルト(アメリカ)、ホーカー タイフーン(英国)、P-38ライトニング(アメリカ)が紹介されている。クソが付くほど真面目な雑誌なんだが、アンコウ🐡やヒヨコ🐥のイラストが載っているのはなんなんだろう・・・。
そしてこの本の一番の見どころは「米陸軍の現用機集」である。P39、P40に始まり、P47やP51が紹介されている。逆説的に考えれば、44年の春には日本の民間人といえどもこうした航空機が前線に出現していることを知り得たということでもある。
巻末では映画「加藤隼戦闘隊」「タイ国空軍を語る」などの宣伝・対談も載っている。
どちらかと言えばこっちのほうが資料的価値がありそうなので画像を載せておく。
海外ニュース欄。「スーパーフォートレス B29」「月産600機を目指すウィローラン工場」「爆撃機射手を悩ますP47」などが紹介されている。
"戦局日ごとに熾烈、敵はマーシャルの一部に上陸し、さらにトラックを襲ってひたすら日本本土への進攻を急いでいる。今こそ日本興亡の最重大時期に直面して我々も死闘を期している。" (編集後記より)
米軍にとられた遠い南の島から発進した成層圏爆撃機が、日本本土の工業基盤を破壊し敗戦の要因を作ったいうのはまさしく歴史的事実ではないだろうか。