兵器道楽

兵器に関する古い時代の本を読んでいます。

図解科学 昭和18年10月号 「新鋭兵器」を読む

集団戦車戦 といえばwotやwtあたりのネットコンテンツで日夜繰り広げられているが、まじめに考えてみるとどうなるのだろうか。

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中央公論社から刊行されていた科学雑誌「図解科学」でとりあげられているのを見つけたので詳しく読んでいきたいと思う。

「7月5日の早朝を期して始められた第三次独ソの攻防戦は、ビエルゴロド、クルスク、オリョールをつなぐ中部戦線に、技術の粋をつくした新兵器と膨大な兵力を投入して、相手を殲滅せずはやまないといった死闘の様相を呈していると報ぜられています」
「作戦が開始されるや虎戦車や新型重戦車の大集団を繰り出してソ連もT34、KW1、KW2で対抗していると報ぜられています」

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その後も足回りや兵装について色々述べている。
かくして話は第一次大戦のソンムとカンブレー会戦に遡り、戦車集団攻撃の威力と、補給線構築の重要性を主張している。
記事そのものも丁寧に書かれているのだが、宮崎駿じみたイラスト見過ごせない。
そんでもって機械化兵団の登場や治金技術の向上によるエンジン、走行装置の改良、装甲の増大に触れておりマークiからホイペット、そしてルノー軽戦車に至るまでの歴史を振り返ることができる内容となっていた。

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やがて話はポーランドでの電撃戦に移る。ドイツ軍の活動を振り返り、車載化歩兵旅団の出現により本格的な戦車集団戦車の時代が到来し、いまや「司令部」「2連隊からなる戦車師団」「車載化歩兵」「車載化砲兵」「車載化偵察部隊」「車載化連絡部隊」「工兵大隊」のそろう完全な機械部隊の必要性を訴えている。

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さらに、戦闘を効率よく行うための通信、工兵、水陸両用、火炎放射 などに特殊な戦車や空陸一体型の作戦、歩兵、工兵、砲兵との緊密な連携にも触れている。もちろんこれらの統合作戦を上手く進ませるためには強力な通信機や補給網が必要なのは考えてみたらわかる筈だが、そこら辺は特に書かれていない(笑)

後半では各国の有する戦車運搬車両、対戦車砲、駆逐戦車、対地攻撃機、戦車阻塞について書いている。そんな中で一貫している主張は「技術の進歩」であることを読者に感じさせる。37ミリ砲はもはや役に立たないものであり、やがて57ミリのものが76ミリ、ひいては88ミリにまで達したことを伝えている。

終わりでは「近代戦の特徴は質のみではありません。次から次へと消耗する莫大な量に上る兵器を、淡々と作り上げる大量生産と相まって、はじめて強大な戦力となって現れるのです。独ソの戦車戦は、同時に独ソの技術戦なのです。」という言葉で締めくくられている。

スペースの都合から割愛したが、この本ではほかにも「巨砲」「遅延爆弾」「暗視装置」についても解説が載っている。
今日の書籍と比較しても「図解科学」はためになるシリーズではあったが、例によって敗戦とともに廃刊となってしまった。
そして本の詳細は中央公論社の中の人ですら知らないという状態になったとか…。

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つづく